鹿児島空港に到着し、すぐに市内行きのバスに乗り込み天文館へ。
ここが鹿児島市内の中心部で、のんびりと昼食をとってから時間があれば歩いて港まで行き、高速船トッピーに乗る予定だった。
台風の影響が気になっていたので船の運行状況を電話で問い合わせてみる。
すると、なんと始発から欠航しているとのこと!
機内と車内でわずかに眠っただけの寝不足の頭で、とにかく冷静に事態を考えてみる。
今日既に欠航になった高速船トッピーも屋久島フェリーも、明日、明後日には鹿児島に近付くという台風23号の影響で、しばらくは欠航するだろう。
そうなると台風が過ぎ去るまで鹿児島で停滞生活を過ごさなければならない。
屋久島のために10日間も休みをとったわけで、同じ台風をやり過ごすにも出来ることなら屋久島がいい。
そうなると船以外のもう一つの上陸手段が飛行機だ。早速、航空会社に連絡をとる。
しかし、今日の屋久島行きの便は既に満席だという。
高速船の欠航も知らずに空港を離れてしまったことを後悔してももう遅い。
乗れるか分からない飛行機のキャンセル待ちのために再び空港に戻る気にもなれず、とりあえず、台風が近付く前なら欠航する可能性も低いだろうと翌日の始発便を予約した。
とにかく腹が減っては戦は出来ぬということで、近くの本屋で鹿児島周辺のガイドブックを買って、近くのラーメン屋「鷹」に入る。
まだ昼前の時間で空いている。
九州系のこってりラーメンを予想していたが、あっさりした味でうまかった。
そして、時間潰しに鹿児島中央駅まで行ったり、インターネット喫茶に入ったりして、夜からレンタカーを借りる。
どこかに一泊してバスで空港まで行く交通費を考えたら、今夜から翌朝空港で返すレンタカーの半日料金も同じようなものだと分かり、車中泊をすることにしたのだ。
夜のうちに空港近くまで行っていれば、寝坊して乗り遅れる心配もない。
ということでこの日はレンタカーを走らせて、吉野温泉センターに入浴してから空港近くまで行って車中泊。
翌朝少し寝坊して(!)、慌てて空港に向かい、出発時刻ぎりぎりに飛行機に滑り込んだのだった。
安心したのもつかの間、この便は条件付き運航で、「悪天候のため鹿児島空港に引き返す可能性があります」とのアナウンス。
飛行機は離陸するとすぐに雲の中に入り、屋久島空港への着陸体制に入ると気流の乱れから、「もう勘弁して下さい」と声に出して言いたくなるほど揺れる、揺れる。
そしてご想像通りの展開へ。
飛行機は突然機首を上げると、機内アナウンスが流れる。
「当機は屋久島空港への着陸を試みましたが、台風23号の影響のため・・・」
まじかよー(ToT)、、、
ということで鹿児島に再上陸。
キャンセル待ちでその後の便に乗る事も出来たが、あの天気では欠航になるだろう。
第一、あんな命がけ(?)のジェットコースターに何度も乗っていたら、寿命が縮んでしまう。
台風が今夜通過するようなので、明日の最終便を予約する。
この日の残り時間は市内観光にあてることにして、不要な荷物は空港のロッカーに預け、サブザック一つの軽装になって市内行きのバスに乗る。
再び天文館に降り立ち、今度は別の鹿児島ラーメンの店「くろいわ本店」へ。
ここのはしっかりとした味だった。その後は歩いて県歴史資料センター黎明館へ。
荷物を預かってもらい、眼鏡をかけて、じっくりと二時間をかけて回った。
歴史好きとしてはこういう形で鹿児島のことを知るのも実に楽しい。
その後、入ったインターネット喫茶で何気なく調べると、今日の屋久島行きの便は僕が乗った始発便以外は全て予定通り就航していたことを知り、ショックを受ける。
まあいい、こっちはその分鹿児島三昧だ。
と開き直りつつ、これまたガイドブックに載っていた味噌かつ屋で夕飯をとり、「やっぱり鹿児島は豚肉がうまい、うまい」と納得して、「城山ユースホステル」に向かう。
ユースホステルでは自転車で日本一周をしている林さんという方が同部屋で、色々と話をする。
台風の多い年で八月からの旅は大変だったようだ。
沖縄に渡るフェリーが欠航続きで足止めを食らってるとのこと。
洗濯をして入浴を済ませて本を読む。
久しぶりの布団にいつしか深い眠りについていた。
夜半に台風23号が鹿児島を通過。
翌朝はときおり強い風が吹きつけるものの空は青く、ゆっくり支度をして出発する。
今日はまず、鹿児島出身の大学の同期、的場氏推奨のラーメン屋に向かう。
海乃屋(カイノヤ)という店で、高校時代の長渕剛がバイトをしていたところだという。
市電に乗って谷山まで行き、昼の開店直後の店に入る。
おいしい鹿児島ラーメンのためにわざわざ電車を乗ってきただけのことはある。
さっぱりしていてうまい。
その後は再び市電で市内に戻り、バスで空港へ。
屋久島行きの便が次々に欠航が決まる中、焦っても仕方が無いので、最終便まで空港内で本を読みながら待つ。
この旅に持参した山尾三省さんの「ここで暮らす楽しみ」と、鹿児島市内で買った兵頭千恵子さんの「屋久島の森を守る」も読み終り、3冊目の「南の光の中で」(山尾三省著)に入っていた。
山尾三省さんの暖かみに満ちたエッセイを読みつつ、気分はすっかり屋久島モードとなっており、後は飛行機が飛び立つのを待つのみだ。
しかし、ここも皆さんのご想像通りの結果へ。
予約した最終便は欠航となる。
メデタクも鹿児島三泊目決定の瞬間だ。
もし、この日の便が欠航になった場合、そのまま空港に泊まり込むつもりでいた。
翌日の昼の便の予約がとれたが、出来れば午前の便に乗るために朝からキャンセル待ちにならびたい。
空港の閉鎖までは空港内の待合所で本を読んで時間を潰し、後は空港の外の待合所に野宿すればいい。
これ以上、市内と空港の往復交通費や宿泊費にお金を使いたくなかったのだ。
最終便が到着してしばらくすると警備員の方が近付いてきて、「迎えの方を待ってるんですか?」と尋ねられる。
「いえ、空港の前で朝まで待ちます。」と私。
すると警備員さんは何やら無線で報告。
「男性なんで大丈夫だと思います。はい。トイレのことだけ。」
そして、私に向かい、「男の人だから大丈夫だろうから、もしトイレ使いたければ警備員の所まで来て下さい。」とのこと。
女だったらもっとどうにかしてもらえるのかなぁと思いながらも、その言葉を飲み込んでその場を去る。
空港前の待合所に行き、平行して並んでいるベンチの間にマットをひいてシュラフを広げる。
マットからハミ出した足元が寒い。
考えてみればコンクリの上で寝るのは初めてかもしれない。
空港前広場の樹上に、浮かんだ月。
いつしか深い眠りについていたのだった。
翌朝、タクシーで空港に到着した人の足音で目をさます。
キャンセル待ち用の列の先頭を示す看板の前に既に3人並んでいる。
慌てる必要もないので、のんびりと撤収を済ませて4番目に並ぶ。
なんとなく、始発便はYS機で二日前の悪夢が蘇るから、二便目の飛行機に乗ることにする。
いよいよ待ちに待った屋久島だ。
今日の午後にはマサ達と合流して野外学校FOSのプログラムに参加することになっていた。
本来は鹿児島で過ごした三泊分が、屋久島で個人でのんびりと巡る時間になるはずだったのだが、今となってはそんなことはどうでも良かった。
三省さんの本をじっくり読む時間が、心の準備にはちょうど良かったのかもしれない。
今では、日常生活からいきなり屋久島へ入っていくんでは、もったいないような気さえする。
ようやく屋久島へ入れることに感謝をしながら、感慨深く飛行機に乗り込んでいったのだった。
