4/22(火) 七入の登山口に車を置き、登山開始。
この日の予定は尾瀬沼まで。
旧沼田街道にあたる山道を歩く。
と言っても、登山道は雪に埋もれていて、分かりにくい。
木にマークされた赤ペンキとコンバスを頼りに歩く。
沢沿いの道を歩くので、何度となく沢を横切る。
そのたびに緊張を強いられる。
両岸は雪で埋もれていて、橋を渡るにも一歩一歩慎重に沢に近づく必要がある。
さらには、上流に行くと橋が完全に埋もれている場所もあった。
この時期は、雪解け水を集めて沢は勢いを増している。
また、一見、雪に埋もれている沢でも、雪の下から水が流れる音が聞こえていたりする。
重荷を背負った状態で踏み抜いて落ちてしまったら、無事に上がって来れるかどうかなんて分からない。
なるべく通過する場所を慎重に選んで、迅速かつ、そーと通過するしかない。
夏は、今回入山した七入よりも上の、「沼山峠」までバスが通るので、尾瀬の中では静かなコース。
ブナの巨木が時折姿を見せ、重荷の疲れを忘れさせてくれる。
途中、抱き返りの滝を13時頃に通過する。
この付近の急登が大変だったけど、最後の一登りと思ってどうにか登り切る。
そこから先は傾斜が緩くなってきたので、スノーシューをつけて歩き始める。
コースタイムの二倍近い時間を掛けて、沼山峠の休憩所に到着。
除雪車が動いていたけど、周囲はまだまだ雪に埋もれていた。
ここではゆっくり休憩せずに先に進む。
なぜなら本当の「沼山峠」はもう少し先だから。
峠に着けば、念願の尾瀬沼が見えるはず。
2004年3月、群馬側から尾瀬沼に入ろうとして辿りつかなかったという経験がある。
四年越し、ずっと行ってみたかった冬の尾瀬沼。
ハヤル気持ちを抑えながら先へと進む。
15時頃、峠に着く。
ここから先はもう登らなくてもよいという安堵感がある。
そして、青空の下にはっきりと見える白い雪原。
無事、尾瀬沼が見えた事を祝して、ちょっと気が早いかもしれないけど、持ってきたフルーツ缶で乾杯!
疲れた体に、フルーツと杏仁豆腐がおいしい!
ここから先はスノーシューで快適に滑りながら下り、雪原に降り立ちます。
途中、平野家のお墓による。
地図に載っているのだが、尾瀬沼の湖畔の丘に、長蔵小屋を開いた平野家のお墓がある。
ここには尾瀬を自然破壊から守った、長蔵小屋三代目の平野長靖(ちょうせい)さんも眠っている。
ちょっと長くなるけど、長靖さんのことを書かせてください。
長靖さんは群馬県片品村から三平峠、尾瀬沼、沼山峠を経て福島檜枝岐村まで抜ける観光道路の計画が進み、尾瀬の自然が破壊される危機を前に、「尾瀬の自然を守る会」を結成、自然保護活動に尽力した人。
時は、昭和46年。
私がまだ生まれる前の話し。
当時発足したばかりの環境庁、その初代長官・大石武一さんに会って、長靖さんは道路建設中止を直談判した。
そして、大石長官の尾瀬視察が決まり、その直後、既に始まっている道路工事は中断することになった。
当時通産大臣を務めていた田中角栄をはじめ、政府の中からも多くの反対があったようだ。
それでも「中止」の英断が通った。しかし、その年の冬、長靖さんは「尾瀬の自然を守る会」の東京での会合に出るために、無理をして豪雪の三平峠を越えて下山中、疲労凍死してしまう。36歳の若さだった。
今の尾瀬が自然のままの姿を保っているのも、この方のおかげと言ってもいい。
そのことを知っているからこそ、平野家の墓に寄りたいと思っていた。
既にGW前の準備で入山した長蔵小屋の方が掘り起こしたのだろう、お墓の頭が雪から出ていた。
合掌してから先へと進む。
GW前の準備が忙しいようで、小屋へはひっきりなしにヘリコプターが来ている。
静かに尾瀬沼を味わいたかったので、今夜の幕営地を求めて、大入洲半島を越えた場所へ。
ようやく眺めの良い場所に来て、荷物を下ろす。
スコップでテントの大きさ分だけ雪面を堀り、切り出したブロックを周囲に並べて風除けにする。
テントの設営が終わると、今度は袋に綺麗な雪をかき集めてきて、水作り。
雪山では沸かしたお湯に雪を足して、少しづつ水を作る。
綺麗な雪とはいえ、安全に飲むためにもきちんと煮沸して、若干まざる不純物をフィルターで漉す。
こうしてようやく、飲み食いに使えるお湯が完成する。
とにかくどんどん水を作らないと夕飯を作れないほど、持って来た水はぎりぎりの状態だった。
尾瀬沼の夕景を眺め、時折カメラを回しながら、MSRのガソリンバーナーでお湯を沸かしていく。
夕飯後も明日以降に使うための、水をどんどん作る。
20時頃、たっぷりと出来たお湯をゆたんぽ代わりに寝袋に入れて、就寝の準備。
この日は、風もなく寒さも厳しくない。
雪に覆われた尾瀬にいることを忘れてしまいそうになるくらいだった。
上空は満天の星空。
のんびり星空を眺めていたい。
そして、念願叶ってようやくたどり着いた尾瀬沼の自然をもっと味わっていたい。
そんな気分から、この日は、テントの入り口を開け放ち、星空を眺めながら横になることに。
夢のような贅沢な時間を味わいつつ、いつしか眠りについたのでした。
